少子化対策の一環として、男性の育児休業(育休)の取得が推進されています。
現代では核家族化が進んでおり、男性の積極的な育児参加が少子化解消にとって不可欠となっています。
2023年、日本政府は「子ども未来戦略」の中で、男性の育児休業取得を積極的に促進する方針を打ち出しました。
2025年4月からは法律も新たに施行され、より男性の育休が取得しやすくなる見込みです。
今回は、政府が進める男性育休取得をよりしやすくするための政策について、分かりやすく解説します。
「男性育休」の取得目標は2025年までに50%
厚生労働省の調査によると、2024年現在の企業で働く男性の育休取得率は30.1%です。
前年度から13ポイント上昇し、過去最高となりました。
ただ、政府は男性の育休取得率を2025年までに50%、2030年までに85%とするとしており、現状の取得率と比較するとまだ大きな差があります。
政府は育児休業給付の拡充や企業への義務付けなど、さまざまな施策を通じてこの目標達成を目指しています。
法制度の整備【次世代育成支援対策推進法、育児介護休業法の改正】
男性育休取得推進に関わって、2つの法律が改正されています。どちらも2025年4月より施行予定です。
次世代育成支援対策推進法
法律の有効期限が10年間延長され、2035年3月31日までとなります。
企業に対し、労働者の育児休業取得状況と労働時間の状況の把握が義務付けられ、さらに育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定が必要となりました。
「男女ともに仕事と子育てを両立できる職場」を目指し、男性の育児休業取得や育児参加、育休後の円滑な職場復帰支援、勤務地や時間帯への配慮などを行動計画に盛り込むことが義務化されました。
育児・介護休業法
事業主の義務として、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置、子の看護休暇を参観日等の行事の参加にも拡充、育児休業取得状況の公表を300人以上の企業に拡大を定めました。
出生後休業支援給付金&育児時短就業給付金の創設【2025年4月~】
パパも育休を取るとなると、その間の給料が減るということが心配になってくるものです。
そこで、従来の育児休暇の際に給付される「育児休業給付金」に加えて、「出生後休業支援給付金」が創設されました。
子の出生直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、夫婦そろって14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、通常の育児休業給付金に加えて休業前賃金の13%が上乗せされます。
これにより、育児休業給付金(休業前賃金の67%)と合わせて、休業前賃金の80%の給付を受けられるようになりました。
社会保険料の免除や非課税措置を考慮すると、実質的に手取りで休業前の100%相当の給付を受けられるということです。
また、2歳未満の子を養育する従業員が育児のために時短勤務を選択し、賃金が低下した場合、時短前の賃金を超えない範囲で、時短勤務中の賃金額の10%が給付される、「育児時短就業給付金」も創設されます。
これによって、育休を取得しようとするハードルが下がると考えられます。
職場環境の改善【企業に取得推進の義務】
働き盛りの男性が育休を取得する際、会社に迷惑をかけることや管理職からの評価にひびくのでは?といった声もいまだにあるようです。
子ども未来戦略の中では、企業に対し以下の3つが取得推進の義務として位置付けられました。
- 育児休業制度の周知・取得促進
- 従業員もしくは従業員の妻の妊娠が判明したら、従業員に対して個別に育休取得制度の通知と意思確認を行うこと
- 雇用環境の整備
- 育児休業・産後パパ育休制度の内容と意義について理解させる研修の実施
- 相談体制の整備
- 取得事例の収集・提供
- 育児休業取得状況の公表
- 従業員1,000人超の企業は年1回育休の取得状況を公表
- 2025年からは従業員300人超の企業も公表
今後は、企業の管理職が制度を正しく理解し、それを実行に移すことが求められます。
企業にとっても、社員の育休取得をきっかけに業務の効率化を進めたり、「柔軟な働き方ができる会社」としてのポジティブなイメージを築いたりといったメリットが期待できます。
人手不足が常に問題視される現代において、就活生にとっても、男性の育休取得率が高い企業は魅力的に映るでしょう。
このような職場環境の改善が、今後さらに進んでいくことが期待されています。
「産後パパ育休」の柔軟な制度運用【分割取得も可能】
産後パパ育休制度は、主に男性の育児参加を促進するために2022年10月1日から施行された新しい育児休業制度です。
従来の育児休業制度とは別に創設された新たな制度であり、両方を併用して取得することが可能です。
特徴は以下の通り。
- 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
- 原則休業の2週間前までに申し出る
- 分割して2回取得可能(初めにまとめて申し出ることが必要)
- 養子であっても取得可能
- 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能
育児休業との大きな違いは、育休は子が1歳まで2回に分割して取得可能なのに対し、産後パパ育休制度は出生後8週間以内に4週間まで取得可能ということです。
つまり、併用して取得した場合、最大4回に分割して取得ができます。妻が退院するときと里帰りから戻ってくるときに分割して取得をしたり、妻が仕事復帰するときに夫が交代で育休に入ったりということも可能です。
家族の状況に合わせて、柔軟に制度を活用していくと良さそうですね。
まとめ
男性が育休取得をよりしやすくするための政策について解説しました。
筆者は2024年に第2子を出産し、夫が育児休業を取得しました。上の子もいて大変な産後を万全のサポートで過ごすことができ、育休を取ってもらってよかったと実感しています。
2025年4月からは法整備が整い、給付金の増額も見込めそうなので、より安心して男性が育児休業を取得できるようになっていきそうです。制度の内容をしっかりと理解し、ご家族のために役立てる一助となれば幸いです。
(執筆者:AKKA)