共働き家庭に高くそびえたつ「小1の壁」

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夫婦で共働きを続けながら、子育てをする家庭が年々増えています。

それとともに叫ばれるようになったのが、「小1の壁」。子どもが小学校に進学することで、共働きを続けることが難しくなる現象です。

「小1の壁を乗り越えられず、退職を選んだ」という声もよくあがります。

小学校教諭を10年経験し、子育てのため退職の道を選んだ筆者から見た、「小1の壁」について、感じたことを述べたいと思います。

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子どもの視点からの環境の変化

私自身は第1子の育児休暇からの復帰と同時に、娘を1歳で子ども園に預けました。

娘にとっても親である私と夫にとっても大きな環境の変化でしたが、先生は非常に温かく寄り添ってくれました。

未満児と呼ばれる1~2歳の頃は、娘の園での様子を毎日連絡帳で知らせてもらえました。年少以降もお迎えに行った際に先生が1日の様子を一言伝えてくれます。お散歩や歌、器械体操、ダンスや読み聞かせなど遊びを中心とした自由度の高いカリキュラムで、子どものもつ力を育んでくださっていました。

一方小学校に進学すると、自分で歩いて登下校しなければなりません。また、遊びが中心だった生活から、基本的には45分単位で授業が組まれ、椅子に座って学習することになります。

子どもにとって大きな環境の変化となるので、「スタートカリキュラム」といった学校ごとに学校生活に慣れるための1年生用のプログラムがある場合が多く、小1担任は遊びや動きを取り入れながら子どもたちが徐々に慣れていけるように工夫を凝らします。それでも現状は子どもにとってかなり大きな変化と言えると、娘が子ども園に通うようになったことでさらに実感しました。

親の視点から…1年生は親の出番がたくさん

親の視点からみても、負担が大きく増えると言われています。

まず、保育園や子ども園は7時から子どもを預けられるところがほとんどですが、小学校は8時~8時半あたりに門が開きます。早朝から働く保護者は子どもの預け先がないと途方に暮れるようです。そして、授業が終わる時間も14時すぎ。その時間に家にいられない保護者は学童保育に預けなければならず、そちらの準備も必要です。

学習が始まれば、毎日の時間割に合わせて持ち物を用意しなければなりません。持ち物は毎日同じではなく、時間割や行事によって変わるので、時間割を一緒に確認し、持ち物を用意してあげなければなりません。宿題もスタートすると、親が見てあげる必要が出てきます。

そして、何よりサポートが必要なのが、子どものメンタル面です。環境の変化に一生懸命慣れようとして、大きなストレスがかかります。様々な個性の子どもたちが約30人、狭い教室で生活する中では、当然トラブルも起こります。そんな時、家で話を聞いたり、困ったことに対して解決策を考えたりと寄り添うことが大切です。

朝7時から子どもを預けられる体制?

小1の壁対策として、7時に学校の門を開け、登校時間まで体育館で待たせるという自治体が出てきました。確かに、親から見ると一人で家の鍵を閉めて登校させなくてよくなるので、良い制度かもしれません。

しかし、子どもの立場からすれば、7時に登校し、緊張しながら慣れない学校生活を送り、その後も18時ころまで学童保育に預けられるとすると計10時間以上学校と学童保育で過ごすことになります。また、教員の勤務開始時間は概ね8時~8時20分の自治体が多く、教員は7時からの早朝登校に付き添うことができません。よって警備員などが付き添いますが、子ども同士のトラブルが起こった場合、普段の子どもの様子を知らない警備員が対応することは難しいと思われます。結局朝教員が出勤したと同時に早朝登校でのトラブル解決に追われるなど、教員の働き方改革の面でも難しさがあります。

小1の期間はパパママどちらかが子どものサポートをできる体制を

では仕事を辞めればいいのか、という声が聞こえてきそうです。しかし、この物価高の世の中、働かなければ生活していけない家庭が多いでしょうし、子どもの将来のために働いてお金を貯めることが必要と考えるのは親として当たり前です。

やはり、国が小1の壁対策として、企業に時短勤務を小1まで取れるように働きかけるべきだと思います。朝7時から学校に預けられるようにする、という小1の壁対策は、親のための制度であって子どものためのものではないと感じます。

せめて大きな環境の変化のある1年生のうちは、両親のどちらかが柔軟に子どもに対応できる余裕が必要です。急速に共働きが増加した結果、社会がその変化に対応しきれていない現状を受け止め、早急に対策に乗り出すことを願います。

(執筆者:AKKA)