江戸時代の日本は「究極の循環型社会」だった ─ 家財道具・小物類のリサイクルは「SDGs」そのもの ─

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皆さんは環境のために、生活の中でどんな工夫をしていますか?

「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉の普及もあり、 日々環境を意識することも多いと思います。

そんな中、近年江戸時代の暮らしに注目が集まっています、

皆さんは江戸時代の日本が「究極の循環型社会」だったということをご存知でしょうか?

江戸時代は今より物資も資源も非常に少なく、人々の間には「使えるものはとことん使う」という考えが浸透していました。そのため、結果的に一切無駄のない、理想的な循環型社会が出来上がっていたのです。

この記事では、江戸時代の家財道具・小物類のリサイクルについて解説していきます。

昔のことと侮るなかれ。先人たちは、現代人には思いもよらない、それでいて大変合理的な工夫を凝らしており、学ぶべきところがたくさんあります。

では早速見て参りましょう。

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江戸時代の家財道具

江戸時代、庶民の持つ代表的な家財道具といえば、箪笥などの衣装箱、行灯などの照明器具、火鉢などの暖房器具、などがありました。

箪笥 ─たんす─

箪笥(たんす)が庶民に普及しだしたのは17世紀後半といわれています。

ただし、すべての家具について言えることですが、新品を持てるのはそれなりの富裕層のみ。そうした人々が使い古して、転売されたものを庶民は安く購入していました。

さらに使い込んで、いよいよボロボロになると、今度は分解されて再利用されます。木材は資材や燃料に、釘などは状態が良ければそのまま使われ、悪ければ古鉄屋が回収して溶かし、再利用されたそうです。

行灯 ─あんどん─

行灯(あんどん)とは、竹や木でできた枠の四方に和紙を張り、その中に蝋燭などの光源を入れた照明器具のことです。 

こちらも古くなると分解され、枠組みは資材などに、紙は古紙回収を生業とする人たちが回収し再生紙に生まれ変わらせたり、燃料にしたりしました。また、昔は蝋燭がとても貴重だったため、溶けた蝋までも集めて、業者が買い取って再利用したそうです。

火鉢 ─ひばち─

火鉢(ひばち)は、陶器や木製の枠の中で火をおこす暖房器具です。

陶器ならば、壊れた際には継ぎ接ぎして直してくれる専門の修理業者がいました。木製の場合は分解して燃料や肥料にしました。

リサイクルは本体だけにとどまらず、灰にまでも及びます。灰は糸などの染色や、陶器の釉薬、畑の肥料に使われるため、江戸の人々にとっては大事な資源でした。専門の買い取り業者までおり、今では捨てるしかない灰が売り物になっていたなんて驚きです。

江戸時代の小物

江戸時代の小物で再利用されないものは殆どありませんでした。

例えば提灯は、張ってある紙が煤で汚れたりすると修理職人が直してくれました。紙の張替えだけでなく、頼めば億号や名前を書き入れてくれるなどのサービスもしていたそうです。

キセルの吸い口と雁首を繋ぐ細い竹の部分を「羅宇(らお)」と呼びますが、この羅宇も再利用の対象でした。専門の羅宇屋という人たちがいて、ヤニで詰まったキセルの交換をしてくれました。

瀬戸物などは今では割れたら捨てるばかりですが、昔は割れた瀬戸物の修理職人がいました。接着の際にはなんと白玉粉を使ったそうです。

古傘の修理は庶民の内職としても一般的でした。時代劇で、家の中で古傘の骨組みを直している描写を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

箪笥の再利用のところにもありましたが、古い鉄製品も格好のリサイクルの対象。江戸時代の子供は寺子屋通いから帰ると、その足で道端の古鉄を拾い集めて業者に回収してもらい、簡単なおもちゃや飴玉と交換してもらったといいます。

まとめ

この記事では、江戸時代の家財道具・小物類のリサイクルについて解説しました。

ここで取り上げたのは、江戸で実際に行われていたもののほんの一部ですが、それでもこれほどのリサイクルは目をみはるものがあります。

現代人は、往々にして様々なものを使い捨てにしてしまいがちです。しかし、先人たちの姿勢を見習って、捨てる前にちょっと立ち止まって考えてみましょう。

その「考えてみる」ということが、持続可能な社会に向けた重要な一歩なのです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。