「耐震等級3の建物なら地震が来ても倒れない」って本当?

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これから家を建てたいと思っているけど、最近、地震が多くなってきて不安。耐震等級3の建物なら地震にとても強いと聞いたけど、実際のところどうなのだろうか。

このようにお悩みではありませんか?

1981年(昭和56年)6月1日以降、建築基準法による耐震基準が大きく変わり震度6強~震度7レベルでも倒壊しないことを基準としています。建物の耐震性を決める基準として「耐震等級」があります。レベルは1~3で、数字が大きくなるほど地震に強いということになります。耐震等級3の認定を取得することで一定の安心を手に入れることは可能ですが、それでも絶対大丈夫とは言いきれないこともあるのです。

そこで今回の記事では「耐震等級3」についてお話ししますので、どうぞ最後までお読みください。

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耐震等級ってなに?

耐震等級とは地震の大きさに対し建物の構造部である柱、梁がどこまで耐えうる状態であるかを等級で示す判断基準を言います。耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で定められた住宅性能表示制度に基づく審査基準により審査されます。さらに、耐震等級は3段階に分かれ、数字が大きくなれば地震に対し強いということになります。

【耐震等級を決定する耐震基準】

  • 建物の重さ(荷重)
  • 壁量の多さ
  • 耐力壁、耐震金物をバランス良く配置

これらの基準をクリアするレベルで等級を決定していくこととなります。地震大国の日本は建物の耐震は世界トップレベルと言えますので、今後に備え高レベル耐震等級の認定の取得に挑戦してみるのも良いでしょう。

参考:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」国土交通省

耐震等級は種類によって建物の強さが違う

耐震等級には種類がありレベル1~3に分けられます。

【耐震等級種類】

  • 耐震等級1

建築基準法に定められた耐震力同等レベル。

震度5強レベルの地震で損傷しない、震度6強~7程度の地震で倒壊しないという性能を持っており、新耐震基準(昭和56年6月1日以降に立てられた建物)の住宅であれば、耐震評価にかかわらず耐震等級1レベルということになります。

  • 耐震等級2

長期優良住宅認定基準で、耐震性能は耐震等級の1.25倍。震度6強~7の1.25倍の力に対し倒壊や崩壊しない建物を耐震等級2と認定されており、長期優良住宅への認定条件は「耐震等級2以上」が求められます。

  • 耐震等級3

防災拠点(消防署・警察署)の耐震基準。耐震性能は耐震等級1の1.5倍。震度6強~7の1.5倍の力に対し倒壊、崩壊しない耐震レベルを「耐震等級3」としています。警察署や消防署などの防災拠点は耐震等級3であり、耐震等級3認定住宅は「防災拠点」に匹敵する耐震強度を持つということです。

長期優良住宅の場合、住宅ローン控除や減税などの優遇制度が一般住宅より高いことから認定を受けることに対し、前向きに検討されている方もいるでしょう。長期優良住宅の認定を受けるには耐震等級2以上(耐震等級3も含み)の審査を受け住宅性能評価を交付してもらう必要があります。耐震等級2以上の住宅の建築をお考えなら工務店、建築会社などに相談してみましょう。

参考:「新耐震基準」国土交通省

耐震等級3の建物なら地震が来ても倒れない?

防災拠点の耐震性を有する耐震等級3の建物であれば地震が来ても倒れないと思われていることでしょう。しかし、耐震等級3の建物でも30年、40年後には地震で倒壊する可能性は十分にあります。そもそも、耐震等級を決定するポイントは「構造体」の強化と壁量の確保にありますので、強化している部分が老朽化し本来の機能を果たせなくなれば例え耐震等級3であっても震度6強や7レベルの巨大地震が起こることで建物が倒壊しないと言い切れません。また、基本的に建物の強度は地震による揺れを繰り返すことで少しずつ落ちていきます。一度の巨大地震で倒壊しなかったから未来永劫大丈夫とは言えないのです。「我が家は耐震等級3」だから大丈夫、と、考えるより建築の専門家による定期点検の実施も怠らないようにしましょう。

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耐震等級3【認定】と【相当】の違い

建売住宅会社やハウスメーカー、工務店などの広告で「耐震等級3相当」という表記をご覧になったことはありませんか?耐震等級3は住宅性能表示に基づく基準をクリアして認定されると【耐震等級3認定住宅】と表記されます。しかし、耐震等級3相当とは、正式認定は受けていないが耐震等級3に相当する性能を持つ建物を、このように表現するわけですね。

【耐震等級3の認定】

  • 設計性能評価(着工前):国土交通大臣登録の第三者住宅性能評価機関へ申請し評価

※設計性能評価の審査依頼をし、合格後の着工

  • 建築性能評価(着工後):国土交通大臣登録の第三者住宅性能評価機関へ申請し評価

※建築性能評価の審査依頼をし、合格後の引渡し

二段階の評価合格を経て耐震等級3の認定を受けることができます。

【耐震等級3相当】

審査、評価はなく、耐震性能が耐震等級1の1.5倍、必要壁量が軽量屋根なら1.86倍である建物なら耐震等級3相当と言えるでしょう。

耐震等級3の表記について、ご不明な点があればハウスメーカーや建築会社に問合せしてみましょう。

参考:一般社団法人「住宅性能評価・表示協会」

耐震等級3にすることによるメリットとデメリット

耐震等級3の建物は地震にとても強い構造であることはご理解頂いていることでしょう。しかし、必ず耐震等級3にしないとダメということはありません。建物を耐震等級3にすることで得られるメリットは大きいと言えますが、逆にデメリットがあることも覚えておきましょう。

【メリット】

  • 大地震が起こっても建物が倒壊するリスクを大幅に軽減できる
  • 安心感がある
  • 住宅ローン金利優遇が受けられることがある
  • 地震保険の割引率が高くなる
  • 建物売却時の金額が高くなることがある

耐震等級3の構造は地震に対し、非常にレベルが高いため大地震が来てもすぐに建物が倒壊することはありません。また住宅ローン金利、地震保険などが安くなり、さらに長期優良住宅も合わせて取得(耐震等級3であれば審査OK)すれば減税の対象にもなりますので、メリットは高いと言えるでしょう。

【デメリット】

  • 建築費用が高くなる
  • 耐震優先で間取りの自由度が低くなる
  • 工事期間が長くなる
  • 建築会社やハウスメーカーに「耐震等級3」住宅である旨を事前告知する必要がある

耐震等級3は使用部材が多くなり、認定を受けるための費用が必要で、審査期間も設計・建築の各性能評価において2ヶ月かかります。一般的に木造住宅の建築期間は6~7ヶ月ですが、耐震等級3仕様にするため10ヶ月程度となります。また、必要壁量を確保するため、開口部(窓など)の数が制限されたり、大空間のリビングなども不可となることも考えられます。

耐震等級1であれば建築基準法で求められる耐震レベルはクリアしているため、大地震が来ても、すぐに倒壊へとは至らない可能性が高いと言えます。耐震等級3レベルは「過剰」では?との考え方もあり賛否両論です。自宅の耐震等級の選択はあくまで家主様ですから、メリットとデメリットを比べ、最良の選択をしていきましょう。

参考:「フラット35」

耐震性の高い建物で安心な暮らしを

地震大国の日本はいつ、大地震が来ても不思議ではありません。関東地方は30年以内に「首都直下型地震」が起こると言われてから久しいですが、専門家によれば大地震の可能性は現在も高いと言われているようです。新耐震基準の住宅(昭和60年6月1日)であれば震度6強~7程度でもすぐに倒壊する恐れはないと言えますが、阪神淡路大震災、東日本大震災などこれまでの予想を大きく超えた地震が起こっていますので、今後、新築するのであれば耐震等級3を視野に入れた耐震性の高い建物で安心な暮らしを手にいれましょう。