屋根工事 ─「屋根工事」の歴史は日本の住宅工事そのもの─

E. 屋根工事
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屋根の役割は、雨風にさらされても耐久性を維持すること

次に屋根工事のほうに入っていきますが、
「屋根」は「大工工事」の中でも、もっとも工夫が凝らされ、雨風にさらされても耐久性を維持できるように、さまざまな試みがされてきた工事箇所であると思います。
「仕様書」を見ても、さまざまな工法が試されてきた形跡があります。

 屋根の役割としては、「風雨や雪から家を守る」「雨の水を効率的に雨樋から流す」「雨漏りを防止する」「夏は涼しく、冬は暖かい、適度な断熱性を保持する」ことが求められています。
 本サイトでは、「ガルバリウム鋼板」を採用した見積もりとしています。ニチハの「横暖ルーフ」シリーズが有名です。

戦後の金属屋根は、トタン屋根→スレート屋根→ガルバリウム鋼板へ

 金属屋根は、昔は「着色亜鉛鉄板」と呼ばれていました。いわゆるトタン屋根です。
 鉄に亜鉛でメッキを施したものが「トタン」ですが、住宅街を歩いていると、今でも見かけます。
似たようなイメージの金属に「ブリキ」がありますが、これは鉄に錫(すず)でメッキ処理をしたものです。
 どちらもあまり聞かなくなったワードなので、レトロな響きがありますね。
 トタン屋根は非常に安くできるのがメリットですが、熱を通しやすく、室温が外気の影響を受けやすいのが大きなデメリットでした。あと「雨音がうるさい」「錆びやすい」のもデメリットです。「ガルバリウム鋼板」はこれらの欠点を克服した上で、耐久性や断熱性を備えたものに進化しています。

 「スレート屋根」も以前はよく使われていました。スレートとは、粘板岩(ねんばんがん)を板状に
加工したもので、デザイン性が高く、薄く軽量で耐震性にも優れています。カラーベストやコロニアルとも呼ばれますが、これらは元はクボタが開発した商品名です。その後クボタは松下電工(現在のパナソニック)と合併し、ケイミューとなりました。

 また、スレート屋根の中には「石綿スレート」というのもありましたが、これは「アスベスト」を含んだ製品ということで、現在は製造禁止となっています。いまでも戸建て住宅の中には、「石綿を含むスレート屋根」は数多く残っていると思います。

「三州瓦」などの日本瓦も根強い人気がある

 あと根強い人気があるのは「日本瓦」です。
 重いのが一番の欠点ですが、耐久性があり、意匠的にも純和風のほか、洋風、南欧風など、優れたものがあります。「三州瓦」などは、建築士に好まれています。

 「仕様書」の屋根工事の部分を読んでいて感じるのは、非常に歴史を感じさせる「オリエンタル」な響きを持った言葉が多いことです。
 「軒先唐草(のきさきからくさ)」「けらば」「破風板(はふいた)」「鼻隠し」「広小舞(ひろこまい)」「登り淀(のぼりよど)」・・・などです。いったい何のことを指しているのか、さっぱりわからない方もいると思います。
 「徒然草」とか、古典の世界に迷い込んだような気分になりますが、これらは、すべて「雨風をうまく処理し、水を下に逃がし、また建物内部への雨水の浸入を防ぐ」ために必要なものです。
 ちなみに、「軒先唐草」を現代の言葉で言うと「軒先水切り板金」ということになるかと思いますが、昔の大工さんが、屋根の施工にこだわりをもって「技の伝承」をしてきたことが分かります。

法隆寺の建立以来、日本人の大工が最も関心を持ったのは「屋根」「和室」「建具」

 「言葉」というものは、もっとも関心の高い対象に対して、「その数が増える」傾向にあるようです。例えば、「旅」という言葉は日本語ではこれだけですが、英語には「Trip(小旅行)」「Travel(一般的な旅行)」「tour(各地を一巡する)」「Journey(長距離・長期間の旅行)」と、思いつくだけでも4つの言葉があります。
 考えてみると、アメリカ人は「移動が好きな国民」です。蒸気機関を発明したのは英国、機械工学が得意で自動車の原型を考えたのも「昔のイギリス人」、その中でも開拓者精神が旺盛で移動が好きだったのがアングロサクソン系のアメリカ人です。
 北方の国、フィンランドでは、「雪」に関する単語が「11種類」あるようです。「関心の度合い」は、言葉の種類で分かります。

 ということで、法隆寺の建立以来、日本人の大工が強く関心を持っていたのは、私は「屋根」「和室」「建具」だと思います。「和室」と「建具」についてはのちほど触れます。

屋根工事の手順

<屋根工事の手順>
1.野地板張り
2.ルーフィング・防水シート敷き
3.屋根葺き
4.板金(軒先・棟の雨仕舞)
5.雪止め設置
6.雨樋

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