出生数「72万人」のうち、「1人目」よりも「2人目・3人目以上」の方が多い、って知ってましたか?

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近年、日本の出生数はまれにみるスピードで減少傾向にあります。
合計特殊出生率は1.2、2024年の出生数は70万人を割り込む見込みです。その中でも驚くべき事実が浮かび上がっています。実は生まれた子どものうち「第1子目」よりも「第2子・第3子目以上」の方が多いことをご存知でしたか?
今回は、この意外な現象の背景に迫り、少子化問題の新たな側面を探ります。

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合計特殊出生率1.2 → 女性が生むのは一人?

合計特殊出生率とは、一人の女性が生涯に産む子どもの平均数を示す人口統計の指標です。具体的には、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものを指します。

日本の最新の合計特殊出生率は1.20です。これは2023年の統計に基づいており、1947年に統計を取り始めて以降、最も低い数値となっています。前年の2022年と比較すると0.06ポイント低下しており、8年連続で前年を下回っています。

合計特殊出生率が1.2ということは、必ずしも日本の女性が一人しか子どもを産まないということを意味しません。 実際には、子どもを全く産まない女性と、2人以上産む女性がいることを反映しています。日本の出生率の全体的な傾向を示す指標であり、個々の女性の出産行動を直接反映するものではありません。

2024年の出生数は70万人を割り込む予想

2024年の日本の出生率に関する確定的な数字はまだ発表されていません。正確な確定値は9月ごろ厚生労働省から発表される予定です。最新の統計からは、以下のことが予想されています。

  • 合計特殊出生率は1.15を割り込む可能性
  • 出生数は70万人を割り込む可能性が高く、68.5万人程度

これらの予測は、日本の少子化問題がさらに深刻化していることを示唆しています。

2023年の出生数の内訳は?  1人目・2人目・3人目、出生順位別の出生数はどうなっているのか

2023年の出生数は72万7288人でした。これは過去最少の記録となり、前年の2022年と比較して4万3471人減少。明治32年(1899年)に人口動態調査が開始されて以来の最低値を更新しました。この数字は少子化問題が一層深刻化していることを示しています。

ただ、厚生労働省から発表された内訳を見てみると、出生数72万7288人のうち、「第1子」は33.8万人、「第2子」が「26.6万人」、「第3子以上」が「12.2万人」となっています。つまり、「第2子、第3子以上」の合計が「38.8万人」となり、第1子よりも多いことが分かります。

■出生順位別の出生数

(単位:人)

出生順位1)昭和60年
(1985)
平成7年
(’95)
12年
(2000)
17年
(’05)
22年
(’10)
27年
(’15)
令和2年
(’20)
3年
(’21)
4年
(’22)
5年
(’23)
 総 数1,431,5771,187,0641,190,5471,062,5301,071,3051,005,721840,835811,622770,759727,288
 第1子602,005567,530583,220512,412509,736478,101392,538372,434355,523338,908
 第2子562,920428,394434,964399,307390,213363,244304,028294,444281,418266,195
 第3子以上266,652191,140172,363150,811171,356164,376144,269144,744133,818122,185

注:平成22、27年は都道府県からの報告漏れ(平成31年3月29日公表)による再集計を行ったことにより、平成29年以前の概況とは数値が一致しない箇所あり
1)出生順位とは、同じ母親がこれまでに生んだ出生子の順序のこと

出所:厚生労働省「人口動態調査(2023)」の「出生順位別の出生数」統計原票より

■「第1子~第3子以上」の内訳

グラフを見ると分かりますが、「第3子目以上」での出生数は「12.2万人」で、2000年以降でも「10万人」以上は3人目以降の出生数となっています。
顕著なのは、1985年と1995年の落差で、50万人台後半だった「2人目出生数」が1995年には40万人台前半まで落ち込んでいることです。これは1980年代後半から女性の社会進出が増えたことが影響していると考えられます。
データからは、ここ10年は第3子以上の出産割合は安定していると見ることもできます。

出所:厚生労働省「人口動態調査(2023)」の「出生順位別の出生数」を基にCraftLifeが作成

ここから分かること

このデータは、日本の出産パターンに二極化が生じていることを示唆しています。以下で詳しく解説します。

多くの女性が子どもを持たない選択をしている

合計特殊出生率が1.20と低いにもかかわらず、第2子・第3子以上の出生数が第一子を上回っているという事実は、多くの女性が子どもを持たない選択をしていることを示唆しています。

女性が子どもを持たない選択をしている要因は、主に次の3つが考えられます。

  • 未婚化・晩婚化: 結婚や出産を選択しない、あるいは遅らせる傾向が強まっている可能性があります。
  • 経済的要因: 子育てにかかる費用や将来への不安が、子どもを持つことを躊躇させている可能性があります。
  • 価値観の変化:結婚や出産に対する価値観が変化し、子どもを持たないライフスタイルを選択する人が増えている可能性があります

第1子を持つ家庭の多くが次の子どもを持つことを望んでいる

子どもを持たない選択をしている女性が増える一方で、子どもを持つ決断をした家庭の多くは、複数の子どもを持つ傾向があることがわかります。第1子を設けるハードルを越えられれば、次の子どもを望む家庭がいまだに多いということでしょう。

今後望まれる政策は?

この結果から今後望まれる少子化対策として、以下のような点が挙げられます。

第2子・第3子を持ちやすくする支援

現在、第1子を出産した家庭の多くが第2子や第3子を持つ意欲があることがわかりますが、育児・経済的な負担が次の出産を難しくしていると考えられます。したがって、第2子や第3子を持つ家庭に対する支援策が重要です。具体的には、

  • 育児休業や育児手当の充実: 特に第2子以降の育児休業や手当が、第1子に比べて手薄である場合があるため、その支援を充実させることが望まれます。
  • 保育サービスの拡充: 保育園や幼稚園の不足を解消し、早期教育や子育て支援を強化することで、複数子どもを持つことへのハードルを下げることができます。

経済的支援の強化

第2子や第3子を持つ家庭は、経済的な負担が大きいと感じることが多いです。特に、子どもが多い家庭に対する直接的な経済的支援が必要です。具体的には、

  • 児童手当や子ども支援金の増額: 複数の子どもを育てる家庭への手当を増やすことは、子育ての経済的負担を軽減し、次の子どもを持つ意欲を高める効果があります。
  • 税制優遇措置: 複数子どもを持つ家庭への税優遇を強化することで、経済的な支援を提供します。

未婚・晩婚対策

第1子の出生数を増やすためには、結婚を望む人が結婚しやすい環境を整備することも重要です。

  • 婚活支援や出会いの機会の創出
  • 若者の雇用安定化と所得向上施策
  • 結婚・子育てに関する肯定的な価値観の醸成

育児と仕事の両立支援

仕事と育児の両立は多くの家庭にとって大きな課題です。特に女性に対する負担が大きいとされており、育児休業の取りやすさや働き方改革が必要です。具体的には、

  • 柔軟な働き方の推進: 在宅勤務や時短勤務、フレックスタイム制など、働き方の選択肢を広げ、育児と仕事を両立させやすくするための施策を強化することが求められます。
  • 男女の育児参画の促進: 父親も育児に積極的に参加できるような環境づくり(育児休業の取得促進など)が必要です。

社会全体での子育て支援の強化

少子化対策は個別の家庭支援だけでなく、社会全体での意識改革も重要です。子育てを社会全体で支えるという視点で、以下のような施策が考えられます。

  • 地域コミュニティでの支援強化: 近隣住民や地域での子育て支援のネットワークを強化し、孤立しがちな子育て家庭をサポートする仕組みを作ります。
  • 育児・教育に関する社会的な価値観の変革: 子育てを「家庭だけの責任」ではなく、社会全体で支えるべき価値があるという認識を広め、子育て世帯に対する社会的な支援が重要であると広く理解されるようにする必要があります。

子どもを育てることへのインセンティブ

子どもを育てることが社会的に評価されるような仕組みを作ることが重要です。子育てをポジティブに捉える社会的な風潮を作り、子どもを持つことの魅力や意義を再認識させる施策が求められます。

長期的な社会保障制度の安定化

少子化が進行すると、将来的な年金や医療などの社会保障制度に負担がかかります。したがって、社会保障制度の持続可能性を高めるための政策も併せて進める必要があります。

まとめ

日本の少子化の現状とその背景に迫り、特に「第2子・第3子以上」が「第1子」を上回る現象について詳しく探りました。少子化が進行する中で、未婚化・晩婚化、経済的負担、そして価値観の変化が大きな影響を与えています。しかし、子どもを持つ決断をした家庭の多くは、次の子どもを望んでおり、この点を踏まえた政策支援が今後ますます重要となります。
今後の政策が、子どもを育てやすい環境を整え、次世代を支える社会づくりに繋がることを期待します。
少子化問題は個人の問題だけでなく、社会全体で解決すべき課題です。今後も国民全体がこの問題に対する理解を深め、実効性のある対策を講じていくことが求められています。

(執筆者:AKKA 構成・編集:CraftLife)