住宅ローンの「ペアローン」を検討していますが、正直どうなんでしょうか?

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 新築住宅のローンを組むのに「ペアローン」を組む夫婦が増えていると聞きます。
 三井住友信託銀行の『資産のミライ研究所』の調査「住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2024年)」によると、ペアローンの利用率は約1割になったようです。また、単独ローンよりもペアローンのほうが借入金額が増えているとの調査結果です。
 背景には、もちろん「住宅価格の高騰」があります。
 年収が「夫600万円、妻300万円」の場合、「夫が、ローンは自分が全部払うよ」と言ってしまえばそれで良いのですが、そうもいきません。「立地がどうの、駅からの距離がどうの、家の広さが・・・間取りが・・」とか検討しているうちに、「もっとローンを借りれたら」と欲が出てくるのかもしれません。欲しい家に目がくらんで、短視眼的になっていないか?注意が必要です。

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住宅ローンの年収倍率の高さは「浅はかさ」の程度?

 よく「住宅ローンは年収の何倍まで借りれるか?」という話がありますが、私はこの倍率は「将来の展望に対する浅はかさ」の程度を示していると思っています。
 たとえば「年収の7倍くらいは大丈夫だよね」という人は、かなり将来展望について浅はかで、自分たち夫婦がこれから直面するかもしれないリスクについて鈍感になっていると思います。そんなことはないよ、と反論されるかもしれません。また、これを聞いた住宅の営業マンや、金融機関の住宅ローン担当者は「大丈夫ですよ」と言うかもしれません。そう言う担当者も、「その人の人生ではないし」、その会社の基準やリスク許容度の話なので、知ったことではないのです。
 仮に、二人の収入を合算で考えて「900万円」の7倍で計算すると「6300万円」の住宅ローンとなります。このローンを実際に組んだ生活を想定すると、生活費に占めるローン比率がかなり高く(立派な家のために)環境の少しの変動にも耐えられなくなる可能性があります。

「住宅ローンを少しでも増やしたい」と思う人に考えてほしいこと

 「ペアローンなら、住宅ローンの金額が増やせるかも」と思った方は、次のことを考えてみてください。家庭の内部と外部で将来的に「起こるかもしれない」ことを想定してみるのです。

 <内部環境>
  ・夫と妻の5年後の仕事・家庭の環境
  ・夫妻どちらかの体調不良、怪我、病気
  ・テレワーク・出社勤務、出張、単身赴任(海外)など勤務形態の変化の可能性
  ・子供ができた(あるいは)子供が5歳~8歳までの状況
  ・子供の教育方針についての考えの変化
  ・夫と妻の両親の状況(健康に暮らせているか)
 <外部環境>
  ・不動産市況の変動
  ・夫婦・両親の環境変化による不動産の役割の変化
  ・両親の不動産・空き家対策・相続税対策
  
 いかがでしょうか。
 「子供ができると」夫婦の関係に変化が生じやすくなります(楽しいのは一瞬?かも)。夫の仕事、妻の仕事、家事・育児の分担、子ども病気、子どもの預け先のトラブル、夫・妻の出世(仕事の負荷)、夫・妻の体調不良・病気、両親のこと(引退・持病・実家)など、挙げるとキリがないくらい、実にさまざまことが起こります。

人生の充実期は、喜びもトラブルもフルコース

 人生の充実期であり、喜びもトラブルもフルコースです。
 何が言いたいのかというと、そういうときに必要なのは「余裕」なのです。住宅ローンで負荷を増やしている場合ではないのです!! 「ペアローン」を組む前に、こういった少し先(数年~5年先)のことを考えていただければと思います。
 ちなみに、この文章の筆者(私)は十数年前に年収の4倍の住宅ローンを組みましたが、「もっと借りておけば良かった」と思ったことは一度もありませんでした。逆に、月々の返済が「賃貸並み」で助かったと思ったことが何度もあります。繰り返しますが、「喜びもトラブルもフルコース」の充実期に必要なのは「余裕」なのです。

「夫の年収の5倍」以内の住宅ローンなら、不測の事態にも対応

 というわけで、私は「年収が夫600万円、妻300万円」の場合、「夫の年収の5倍」以内の住宅ローン(この場合は3000万円以内)をオススメします。つまり「債務者は一人」のほうが良いです。そうしておけば、「子育てが思ったより大変で、妻が子供の傍にいなくてはならない」場合でも対処が可能。あるいは夫に何かあった場合に妻(の年収)が家計を助けることもできます。さらに夫・妻の両親から支援があると、夫婦の負担も減り、人生の充実期を無難に乗り切る可能性が高まります。

【まとめ】一時の見栄に惑わされないように。住宅ローンは慎重すぎるが吉

 家を検討している、その瞬間は楽しいものです。「立地がどうの、駅からの距離がどうの、家の広さが・・・間取りが・・」気になるのは分かりますが、一時の「見栄」に惑わされないように。住宅ローンは慎重すぎるくらいが吉です。